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東京地方裁判所 平成5年(ワ)11827号 判決

原告

松本博志

右訴訟代理人弁護士

黒川康正

被告

木山保

右訴訟代理人弁護士

岩﨑精孝

主文

一  被告が、平成五年三月二九日、原告に対してなした解雇の意思表示が無効であることを確認する。

二  被告は、原告に対し、八八七五万円及び平成八年四月以降毎月二五日限り二五〇万円を支払え。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

主文同旨

第二事案の概要

本件の概要は、以下のとおりである。

原告は、被告の開設する中央林間病院の院長であったところ、被告側から口頭で同病院を辞めるように告げられたり、就業規則に基づき懲戒解雇する旨が記載された書面を受取ったりしたことから、被告に対し、主位的に、原、被告間の契約関係は雇傭契約であるが、右懲戒解雇は、懲戒事由が存在せず、合理的な理由なくして行われたものであるとして、解雇の意思表示の無効確認及び賃金の支払いを請求し、予備的に、原、被告間の契約関係が委任契約であったとしても、被告は、原告にとって不利益な時期に委任を解除したものであり、原告は賃金相当額の損害を被ったとして、その賠償を求めた。これに対し、被告は、原、被告間の契約関係は委任契約であるとした上、原告及び被告は、委任契約を合意解除したものであるとし、そうでないとしても、被告は、原告が背信的な行為を行ったために委任契約を解除したものであるとし、更に、仮に原、被告間の契約関係が雇用契約であったとしても、被告は、原告に対し、就業規則に基づき懲戒解雇したものであるとして争った。

一  争いのない事実等

以下の事実関係は、当事者間に争いがないか、括弧書きで掲げた証拠により、容易に認められる。

1  被告は、神奈川県大和市(以下、略)所在の個人病院である中央林間病院の経営者である。

2  原告は、平成三年秋頃から、中央林間病院において、週一回の割合で非常勤医師として勤務していたが、被告の依頼により、平成四年四月から、中央林間病院の院長に就任した(院長就任に当たり締結された原、被告間の契約を、以下「本件契約」という。)。

3  被告は、平成五年三月二九日、原告に対し、原、被告間の契約関係解消についての意思表示をした。

4  被告は、平成五年四月二三日、代理人を通じて原告代理人宛に、原告は以下の言動を行い、これらは中央林間病院の就業規則(以下「就業規則」という。)五四条一ないし三、八、一〇、一一、一四号に該当するので、被告は、就業規則五五条七号に基づき、平成五年三月末日付で原告を懲戒解雇に付する決定をしたという旨の記載のある通知(以下「本件通知」という。)を送付した。

(一) 当病院の財務、経営内容が悪化していることを関係者以外の一般職員に故なく吹聴し、一般職員の不安を煽る行動を繰り返し、更に、当病院に近接する当病院と競業関係にある病院にも勤務し、同様なことを吹聴し、当院の信用を著しく毀損し、当院の業務を妨害した。

(二) 職員個人の能力について批判し、自尊心を傷つけるが如き言動があった。

(三) 被告を誹謗、中傷し、名誉を傷つけた。

(四) 当病院の規定に従わず、医療機器の購入を勝手に行った。

(五) 職務上の秘密を外部に漏らし、病院の中傷を行い、信用と名誉を傷つけた。

5  中央林間病院の就業規則には、以下の規定がある(〈証拠略〉)。

一条 (目的)

(一) この規則は、中央林間病院(以下「病院」という。)職員の就業に関する事項を定め、病院業務の円滑な遂行をはかることを目的とする。

二条 (職員の定義)

この規則において職員とは、次の各号に掲げる者を除き、第五条に定める手続を経て採用され、常時業務に従事する者をいう。

〈1〉 日々雇い入れられる者

〈2〉 二か月以内の期間を定めて雇傭される者

〈3〉 その他臨時又は特別の契約により雇傭される者

三条 (適用除外)

前条に規定する職員のうち、監督もしくは管理の地位にある者(院長、副院長、総婦長、事務長、次長、看護婦長、課長及び係長)については、次の各号に定める事項に限り、この規則の適用を除外する。

〈1〉 就業時間及び始業、終業時刻に関する事項

〈2〉 休憩及び休日に関する事項

五条 (採用)

(一) 職員の採用は就職を希望する者のなかから試験又は選考の上、適格と認めた者を採用する。

(二) 採用にあたっては、健康診断を実施しなければならない。

二三条 (禁止行為)

職員は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

〈1〉 当病院の名誉を毀損し、又は利益を害すること。

〈3〉 自己の権原を越えて、独断専行すること。

〈8〉 業務の正常な運営を妨害し、又は職場の風紀、秩序を乱すこと。

五一条 (表彰及び懲戒の原則)

職員の表彰及び懲戒は、次の各号に定める原則に従い実施する。

〈3〉 懲戒委員会を設置し、懲戒についてはすべて委員会にはかりその結果に基づき院長が決定すること。

〈4〉 懲戒委員会は、委員三名をもって構成し、委員は院長、副院長、事務長各一名とする。

五四条 (懲戒)

職員が次の各号の一に該当するときは懲戒を行う。

〈1〉 この規則及び当病院が定めた諸規定又は方針にしばしば違反したとき。

〈2〉 二三条に掲げる職員の禁止行為を犯したとき。

〈3〉 故意に業務の能率を阻害し、又は業務の遂行を妨げたとき。

〈8〉 教唆、煽動により、風紀、秩序を乱したとき。

〈10〉 素行が不良で、他の職員が迷惑を被るとき。

〈11〉 上長を誹謗又は中傷し、もしくは不当に反抗して、その名誉、信用を傷つけたとき。

〈14〉 職務上知り得た秘密を他に漏らし、又は漏らそうとしたとき。

五五条 (懲戒の区分)

前条の規定による懲戒は、その情状により次の区分に従って行う。

〈7〉 懲戒解雇

予告期間を設けることなく即時解雇する。この場合において、所管行政官庁の認定を受けたときは、解雇予告手当を支給しない。

二  争点

1  本件契約の法的性質は、雇用契約、委任契約のいずれであるか。

2  本件契約が雇用契約である場合において

(一) 懲戒解雇の有効性。

(二) 平成五年四月一日以降における原告の賃金債権。

3  本件契約が委任契約である場合において

(一) 原告及び被告は、平成五年三月二九日、委任契約の合意解除をしたか否か。

(二) 被告は、平成五年三月二九日、原告に対し、委任契約解除の意思表示をしたか否か。

(三) 原告の被告に対する民法六五一条二項に基づく損害賠償請求権の有無及び損害額。

三  当事者の主張

1  争点1(本件契約の法的性質は、雇用契約、委任契約のいずれであるか)について

(原告)

原、被告間の契約は雇用契約である。

(被告)

原、被告間の契約は委任契約である。

2  争点2(一)(懲戒解雇の有効性)について

(被告)

被告の原告に対する懲戒解雇は以下の理由により有効である。

(一) 懲戒事由の存在

(1) 原告は、中央林間病院の診療部門院長として病院の経営及び運営が円滑に進むように自ら主体的に職員を指揮監督すべき職務を負っているにもかかわらず、以下のとおり数々の言動を行った。

〈1〉 原告は、平成五年一月頃、中央林間病院の勤務医である蛯沢勇から退職及びその後の進路の相談を受けた際、同人に対し、「中央林間病院は確かに長くいる病院ではない。木山院長は病院の状況が良く分かっていない。木山院長は何を言っても良いという馬鹿がつくお人好しである。あれほど騙しやすい人はいない。」等と言い、また、常日頃から、「この病院の悪いところが良く見えてきた。経営状態は余り良くない。」等と言いふらしていた。

この行為は、就業規則五四条一、二、八、一一、一四号及び二三条一、八号に該当する。

〈2〉 原告は、平成四年暮から平成五年初旬頃までの間に、中央林間病院のナース・ステイションにおいて、看護職員楠岡美紀等に対し、原告の受け持った患者が死亡したとき「自分にお金を残さなかった。」等と不謹慎なことを言い、又、この病院の看護婦や医師のレベルが低い等の悪口を言い、看護職員に不愉快な気持ちをいだかせ、更に、患者に必要でない治療をすればもうかる等と医師としてまったく言うべきではないことを平然と述べていた。

この行為は、就業規則五四条一、二、三、八、一〇号、及び二三条八号に該当する。

〈3〉 原告は、平成四年一二月頃から平成五年三月末頃までの間にナース・ステイション内において職員である戸城久視に対し、中央林間病院の診療、カルテの記載方法、医師、看護職員、事務関係職員のレベルの低さ及び病院の経営が下手であること等聞くに耐えない言動があった。これらの言動は院長として病院の質的向上をさせるための言動ではなく単なる悪口であり、どのような点をどのように改善させるべきであるとの指摘は全くなく、職員に不快感と不信感を与えるだけのものであった。

この行為は、就業規則五四条一、二、三、八、一〇、一一号及び二三条一、八号に該当する。

〈4〉 原告は、日時は不明であるが、ナース・ステイションにおいて、看護職員原田トヨ子等に対し、中央林間病院の患者のレベルが低い、看護職員、事務職員のレベルももちろん低い等と悪口を言い、原告に対し、付け届けをしない患者を差別的扱いをする等不当な行動が見られた。

この行為は、就業規則五四条一、二、三、八、一〇号、及び二三条一、八号に該当する。

〈5〉 原告は、平成四年暮頃から平成五年二、三月頃にかけて、看護職員磯田喜子等に対し、ナース・ステイション内において、被告の経営方針に対する不満(いつも個人医院当時の癖が抜けなくて困る等)、中央林間病院には相当な借金がある等と言い、医師や看護職員のレベルが低いと批判し、外来及び入院患者に貧乏人が多く知能レベルが低い等と全く聞くに耐えない言動を繰返していた。

この行為は、就業規則五四条一、二、八号、一〇、一一、一四号及び二三条一、八号に該当する。

〈6〉 原告は、日時は不明であるが、ナース・ステイションにおいて、看護婦職員池明子に対し、すべてお金が一番、お金のない人は治療を受ける必要もない等と、医師にあるまじきことを放言し、中央林間病院の看護職員に対する悪口を言いふらし、給料がもったいない等聞くに耐えない言動を繰返していた。

この行為は、就業規則五四条一、二、八、一〇号及び二三条一、八号に該当する。

〈7〉 原告は、主として日曜日にナース・ステイションにおいて、看護職員日吉幸子に対し、被告に対する批判を行い、中央林間病院の経営状態が悪化している等と職員に不必要な不安を与える言動を行った。

この行為は、就業規則五四条一ないし三、八、一〇、一一、一四号及び二三条一、八号に該当する。

〈8〉 原告は平成五年一月より三月頃までの間にナース・ステイションにおいて、看護職員菊地明子、田中富美代に対し、中央林間病院は経営がうまく行っていない、このままではこの病院はつぶれる、借金が増えていく、等と職員に不必要な不安を与える言動を行った。

この行為は、就業規則五四条一ないし三、八、一〇、一一、一四号及び二三条一、八号に該当する。

(2) 原告は、必要な医療機器の購入には必ず病院の最高意思決定機関であり、名誉院長である被告、院長である原告、事務長、総婦長及び医事課長を構成員とする管理会議の決議を得なくてはならないことを熟知していながら、以下の医療機器を独断で業者に発注し、購入した。

(購入機器納品日)

平成五年三月二四日

(購入機器等の明細)

〈1〉 ヘモサーム(冷温水槽)二槽式クーラー ヒーター(プラスティパット含む)一式

〈2〉 ファイバーオプティックケブルアンドライトソース 架台付き二Ch一式

〈3〉 ポータブルデフィプリレータ用内容パドル一式

〈4〉 血液加温器一式

〈5〉 上下昇降器械台一台

〈6〉 手術用踏台(一段用)八台

〈7〉 別表開心術器具及び消耗品一覧表記載の物品

(以下、右〈1〉ないし〈6〉を「本件各医療機器」、〈7〉を「別表記載の物品」という。)

(購入先)

〈1〉ないし〈6〉 コスモテック株式会社

〈7〉 株式会社ミユキ技研

この行為は、就業規則五四条一号、二号及び二三条三号に該当する。

(二) 懲戒委員会は、原告を平成五年三月末日付けをもって、原告を懲戒解雇に付する決定をした。

(原告)

被告が懲戒解雇事由として主張するものは、事実無根であり、原告には、懲戒解雇事由に該当する事由が存在しない。又、平成五年三月二九日、原告は、第三者で病院の経営運営と関係のない、初対面の森福という人物から解雇する旨を伝えられたに過ぎないのであるから、右解雇の意思表示は有効性がない。加えて、被告が「懲戒委員会」と称しているものは、原告に退職を求めた平成五年三月二九日の翌日である同月三〇日に、被告が、医師達を集め、形式的かつ一方的に説明したものであって、体裁を整えただけのものに過ぎない。

以上からすれば、被告の原告に対する懲戒解雇の意思表示は無効である。

3  争点2(二)(平成五年四月一日以降における原告の賃金債権)について

(原告)

本件契約における原、被告間の賃金支払約束は、月額二五〇万円を、毎月一五日締めで当月二五日(但し、当日が銀行の非営業日である場合は、直前の営業日。)に支払うという内容であった。

したがって、原告は、被告に対し、平成五年四月一日から本件口頭弁論終結日である平成八年四月五日までの間の賃金として八八七五万円(但し、平成五年四月一日から同月一五日までの半月分一二五万円及び二五〇万円の三五か月分の合計額)及び平成八年四月以降毎月二五日限り二五〇万円の賃金の支払いを請求する権利がある。

(被告)

争う。

4  争点3(一)(原告及び被告は、平成五年三月二九日、委任契約の合意解除をしたか否か)について

(被告)

被告は、前掲の理由により、原告との信頼関係が著しく破壊され、原告に院長として診療部門を任せることができない状況に陥ったため、平成五年三月二九日頃原告に対し、委任契約解除の申入れをなし、原告の承諾を得、右委任契約を合意解除したものである。

(原告)

原告は、平成五年三月二九日、被告と委任契約の合意解除をした事実はない。

5  争点3(二)(被告は、平成五年三月二九日、原告に対し、委任契約解除の意思志(ママ)表示をしたか否か)について

(被告)

被告は、平成五年三月二九日、原告に対し、委任契約解除の意志意思(ママ)をした。

(原告)

争う。

6  争点3(三)(原告の被告に対する民法六五一条二項に基づく損害賠償請求権の有無及び損害額)について

(原告)

仮に、原、被告間の契約関係が委任契約であったとしても、被告は、原告のために不利なる時期に委任を解除したので、原告の被った損害を賠償する義務がある。右損害額は、「第一請求」記載の金額を下回ることはない。

(被告)

原告は、被告の依頼により中央林間病院の院長としての職務を処理し、病院の経営の向上と発展のため、その職務を全うする義務を負っているにもかかわらず、前掲の各背信行為を繰返すことにより、自ら病院内の秩序や人間関係を悪化させ、被告に対する誹謗中傷を行い(ママ)た上、医療機器の無断購入までをも行った。これにより、原、被告間における信頼関係は原告の右言動により違法不当に破壊されるに至ったものであり、被告が原告との委任契約を解除することには、正当な理由がある。

第三当裁判所の判断

一  争点1(本件契約の法的性質は、雇用契約、委任契約のいずれであるか)について

1  (証拠・人証略)、原、被告各本人尋問の結果(但し、被告本人尋問の結果については、後記認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実関係を認めることができる。

(一) 院長就任以前の状況

中央林間病院は、被告が全額出資し、昭和五五年九月頃開設した個人病院であり、被告が院長に就任していた。中央林間病院においては、循環器系統の医師が不足していたことから、当時、事務長で、人事等の仕事を担当していた大山和顕(以下「大山事務長」という。)は、被告から、適切な医師を探して欲しいとの指示を受けていた。大山事務長は、原告と旧知の間柄であり、原告を優秀な医師であると認識していたことから、原告に対し、平成三年の春か夏頃、中央林間病院において勤務して欲しい旨を依頼した。原告は、しばらくの間返答を保留していたが、被告や当時の副院長が病気で倒れ、中央林間病院において回診に当たる医師の補充が不可欠となったことから、右の依頼を受けることとした。当時、原告は、埼玉医科大学総合医療センター及び東京大学先端科学技術セ(ママ)ンターの教授の地位にあり、相武台病院及び榊原厚生会NSビルクリニックにおいても医師として勤務していたことから、常勤勤務は無理であったので非常勤勤務とし、平成三年一一月以降、月二回、隔週で中央林間病院において定期的に回診業務を行っていた。

(二) 院長就任前後の状況

(1) 院長就任に至る経緯

その後、原告が東京大学先端科学技術研究センター教授を辞することとなったことから、被告及び大山事務長は、原告に中央林間病院の常勤医として勤務してもらうことを希望した。そして、右就任を依頼するにつき、原告の地位及び経歴等からして、単なる医師や、副院長として依頼したのでは原告の承諾を得られないであろうと思われ、一方、被告自身も個人病院の開設者であって簡単に院長を降りることができないという事情も存したため、被告が院長から名誉院長となり、原告には院長し(ママ)て就任してもらうこととした。

原告の院長就任にあたり、被告が原告に期待していたことは、原告が循環器疾患を中心とした診療業務を行うことであり、又、原告の院長就任は、その経歴からして、中央林間病院の経営や人事管理等においても有益となるものと考えていた。

(2) 院長就任時における合意内容

原告は、中央林間病院に院長として就任することを承諾し、東京大学先端科学技術研究センターには平成四年三月三一日付けで辞表を提出した。原告が院長就任にあたり、被告及び大山事務長と合意した内容は以下のとおりであり、契約期間は定めなかった。

就任開始 平成四年四月一日

勤務日 週四、五日

勤務内容 内科医、外科医としての診療、回診業務、管理会議(構成員は、主に原、被告、総婦長及び事務長であり、病院運営の重要事項決定のための意思決定機関としての役割があった。)への出席

賃金 月額二〇〇万円

中央林間病院には給与規定が存在したが、古くて現状に合わなくなっていたため、当時は使われていなかった。そこで、医師を招聘する際には、大山事務長が事前に折衝し、大学の医局所属医師については大学の規定に従って賃金額を決めていたが、その他の医師については、その都度金額を決定していた。大山事務長は、通常の医師の場合は年俸で金額を決めていたが、原告の場合には月額二〇〇万円を支払うことで合意した。

(3) 院長就任後の勤務状況等

原告が中央林間病院の院長に就任した平成四年四月一日、被告は、朝礼の席で従業員に対し、原告が院長として就任し、被告が名誉院長となったことを説明し、被告の呼称については、従来どおり「木山院長」と呼ぶように述べた。

原告は、院長就任後、原告の了解の上で被告が決定した勤務表に従い、午前八時半に出勤して午後五時半まで診療を行った。また、「夕診」と称する夕方の診療業務が勤務医の間で割り当てられており、原告も週二回程度の割合で、午後五時半から午後七時半まで担当した。原告の学会出席は、原則として絶対行かなければならないもののみが許可され、事前に被告に届出をして出席した。又、原告は臨床工学技士国家試験委員であったが、国家試験の試験問題作成や予備会議出席のために病院を欠席する場合も、被告の了解をとっていた。

大山事務長は、原告の中央林間病院における職務の内容は、患者の診察、他の医師の指導、院長回診であると把握しており、原告が事務的な事項について院長として関与し口出しすることも、人事に関与することもまったく無かったと認識していた。大山事務長は、看護婦を採用する際、原告報(ママ)告せずに被告に報告して決定していた。

被告は、原告の院長就任後も、中央林間病院の実質の経営者は自分であると認識し、実際にも経営業務を行っていた。又、院長であったときと同様に、消化器専門の医師としての診療も行っていた。

(4) 対償の支払方法等

原告に支払われていた金は「給料」という形で出されており、原告に渡されていた給与明細書の表題も「給与」とされていた。原告は、健康保険、厚生年金保険及び雇用保険に加入し、「給与」の中からこれらの掛け金が控除され、所得税の源泉徴収が行われた。原告は税務申告をする際、給与所得として申告していた。又原告は、他の従業員と同じ時期に、一〇〇万円ずつ年二回の賞与が支給された。

(三) 原、被告間の契約の性質についての大山事務長の認識

原、被告間の契約締結は、大山事務長が執り行った。大山事務長は、昭和四五年頃から病院関係の仕事に携わっており、中央林間病院には平成二年四月から勤務していたが、病院が医師との契約締結する場合に雇傭以外の形態をとった経験を有しておらず、又中央林間病院においては、下請企業と請負契約を締結している以外は全員が雇傭契約関係にあるものと把握して処理していた。そして原、被告間の契約については、非常勤勤務時代も院長就任後も一貫して労働契約であると認識し、その認識の下に原告と折衝していた。

2  本件契約の性質

雇用契約と委任契約とは、いずれも他人の労務の利用を目的とする契約であるという点において共通するが、ある契約がそのいずれに当たるのかについては、使用従属関係の有無により判断するべきと解される。原告は、中央林間病院の「院長」という肩書を与えられてはいたものの、右に認定した事実関係によれば、同病院の実権はほぼ全面的に被告が掌握しており、被告は自分が実質的な経営者であると認識し、原告も被告を経営者と認めて、事務的な事項や人事については、管理会議の席上で発言の機会を有していた以外には関与せずに被告に任せ、自らは専ら被告の指示の下に診療を中心とした業務をしていたに過ぎないのであるから、被告と原告との間には使用従属関係が認められ、本件契約の法的性質は雇傭契約であると認めるのが相当である。もっとも、(人証略)の証言によれば、原告の給料は、被告よりも高額であったことが、又、弁論の全趣旨によれば、原告の労務は、代替性が乏しいものであったことがそれぞれ認められるが、これらは、雇用契約の成立を妨げる絶対的な理由となるものではないので、これらの点を考慮しても、本件契約の性質を雇用契約と認定することを妨げるものではない。

二  解雇の行われた時期及び解雇理由について

1  (人証略)の証言、原、被告各本人尋問の結果(但し、被告本件尋問の結果については、後記認定に反する部分を除く。)、前掲の当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実関係を認めることができる。

原告は、被告の求めにより、平成五年三月二九日午後五時頃中央林間病院の管理会議室を訪れた。同所には、原、被告、大山事務長及び被告の息子の妻の父親である森福某(以下「森福」という。)が集った。

森福は、原告と初対面であり、原告に対し、自分が中央林間病院顧問に就任した旨を述べた後、「三月一杯でご遠慮戴きたい。」という趣旨のことを述べた。森福からこのような話があった後、被告は、原告に対し、同人が、病院が潰れるという噂を流した等として、激しい調子で非難し続けた。原告は、被告が原告を解雇したものと理解し、被告の述べる原告が行ったとする事実関係については否定したものの、その場の状況からして、聞き入れられるような雰囲気ではなかったことから、「被告が原告を退職させる意思であることは理解したが、その理由について、文書で正式に説明して欲しい。」旨を申し述べた。又、同席していた大山事務長も、同人自身、同日の午前中かあるいはその前日頃、被告から、原告を中央林間病院の医師として招聘したことを理由に、事務次長に降格する旨を告げられていたことから、原告が被告により解雇されたものであると理解した。

翌日である同月三〇日、原告が中央林間病院に出勤すると、女性事務員が、原告に名前と印鑑を押すだけに整えられた「退職願」と印刷された用紙を渡そうとしたので、原告は、署名捺印できないことを述べると共に、文書で理由等を詳しく説明して欲しい旨述べた。

原告は、被告から解雇理由についての回答が来るのを待っていたが回答がないため、代理人を通じ、平成五年四月一九日付け通知書で、被告に対し、解雇理由を文書で明示するように求め、同通知書は同月二〇日被告に到達した。

そして、右通知書に回答する形で、被告代理人から、平成五年四月二三日付けの本件通知が原告代理人宛に送達された。

被告が原告との雇用契約の解消を望んだのは、被告が平成五年三月二九日の直前に行われた看護婦集会の席で被告が責められたことが主要な理由であり、その他、被告が平成四年末頃からの原告の言動を疎ましく感じたことや、又、被告に対する誹謗中傷が間接的に耳に入っており、それが原告によるものであると考えたためであった。

2  被告は、前記認定のとおり、数次にわたって原告に対し雇用契約の解消を求める言動をしているが、〈1〉平成五年三月二九日における森福及び被告自らの言動は、若干明確性に欠ける点はあったものの、原告及び大山事務長が、被告が原告を解雇したものと理解できる内容のものであったこと、〈2〉被告が原告との雇用契約解消を望んだ動機は、平成五年三月二九日から本件通知に至るまで変化が見られないこと、〈3〉平成五年三月二九日の出来事から本件通知までは約一か月程度しかなく、時期的にも接近していることに鑑みれば、平成五年三月二九日から本件通知に至るまでの、被告の原告に対する雇傭契約解消を求めた言動は、被告の原告に対する一つの解雇意思の表れであって、一体のものであると認めるのが相当であり、被告は、平成五年三月二九日、原告に対し、解雇の意思表示をしたものであり、その法的性質は、本件通知記載の理由による就業規則に基づく懲戒解雇であったと認めるのが相当である(以下、平成五年三月二九日に始まる被告の原告に対する解雇の意思表示を「本件懲戒解雇」という。)。

なお、原告本人尋問の結果によれば、原告は、右三月二九日、被告が原告を非難した後に「分かりました。」と述べたことが認められるが、これは、前記認定のとおり、被告が原告を退職させる意思であることを理解したとする趣旨であり、右の発言によって原告が退職について承諾したものと認めることはできない。また、翌三〇日に女性事務員が原告に「退職願」用紙を渡そうとしたことは、被告が、原告との雇用契約の解消について、原告の自主退職の形式を取ろうとしていたことが推認されるが、これにより右三月二九日に被告が原告を解雇したと認めることを妨げるものではない。

三  就業規則の適用の有無について

原告については、院長という地位にあることから就業規則の適用を受けるか否かが問題となるが、就業規則三条は、院長についても原則的に就業規則の適用がある旨規定していることから、同条が適用除外としている事項及び院長に対する適用が理論的に不可能な条項を除き、就業規則は原告についても適用があると解するのが相当である。懲戒に関しては、適用を否定するべき理由はなく、原告についても就業規則の適用があると解される。

四  争点2(一)(懲戒解雇の有効性)について

1  懲戒事由の有無

(一) 原告の発言関係について

(1) 被告に対する誹謗、中傷

(人証略)の証言によれば、原告は、中央林間病院の総婦長であった高橋きよい(以下「高橋総婦長」という。)に対し、経営の方法に関し「老人をなるべくとらないようにしたい、それに対しては名誉院長に得心をしていただいたほうがいいのではないか。」と述べたことや、被告の仕事の方法に関し「手術のときにマスク一つで手術室に入って術野を見ることは汚い。」「もう少しじっくりと体のいろいろなところも見て病巣を見つけて欲しい、あれでは患者がかわいそうだ。」述(ママ)べたことがあったことが認められる。又、原告が、中央林間病院の蛯沢勇医師(以下「蛯沢医師」という。)から、同病院を退職したい旨相談を受けた際、同人に対し、「中央林間病院には学会認定の指導医もいないし、蛯沢医師のような若い、これから学位を取る立場の人が長くいるところではない。」という旨を述べたり、同人と、「被告は騙されやすい性格である。」等と話したことがあったことを原告は本件口頭弁論において認めている。なお、(証拠略)には、被告の主張に沿った記述があるが、反対趣旨の原告本人尋問の結果に照らし、認めることができない。

以上を検討するに、原告が蛯沢医師に対し、「中央林間病院には学会認定の指導医もいないし、蛯沢医師のような若い、これから学位を取る立場の人が長くいるところではない。」等と述べた点については、就業規則五四条二号、二三条一号該当性が、又、「被告は騙されやすい性格である。」ということを話した点については、就業規則五四条一一号該当性が一応問題とはなりうるが、いずれもこの程度では、右各号の禁止する「名誉毀損」や「誹謗又は中傷」に当たるとは認められない。その他の点については、経営や医療業務について原告に許された範囲内の正当な意見の主張にとどまり、懲戒事由に該当せず、他に、原告がこれに抵触する発言をした事実を認めることはできない。

(2) 看護婦等に対する誹謗、中傷

(証拠・人証略)によれば、原告は、高橋総婦長や、他の看護婦に対し、カルテの記載方法が悪いこと、中央林間病院の医師、看護婦、事務職員のレベルが低いとの発言をしたことが認められる。

この点について検討するに、(人証略)の各証言によれば、医師、看護婦及びレセプト関係の医事課の職員等の教育及び指導は、原告の職務内容であったこと、原告の医学水準は高く、従業員もそれを認識していたことが認められるところ、前掲の各証拠関係をもってしては、原告の前記発言が、原告の右職務内容や立場に照らして許容された範囲を逸脱したものであることを認めるには足らず、他にこれを認めるに足りる証拠もない。そうすると、原告の前記発言が就業規則上の懲戒事由に該当するとは認められない。

(3) 中央林間病院の経営状況の悪さについての吹聴

(証拠・人証略)によれば、原告は主に日曜祭日に中央林間病院のナース・ステイションにおいて、同病院の経営状況が悪いことを看護婦に話したことが認められる。

一方、(人証略)の証言、原、被告各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、〈1〉被告は、平成三年頃、中央林間病院を売却しようとしたことがあり、買受を希望する人物と交渉したり、右買受け希望者が病院内を何度か見て回り、従業員もその様子を目撃していたこと、〈2〉従業員は、原告が中央林間病院で就労する以前から、同病院の経営が危ないのではないかと心配して大山事務長に尋ねたことがあり、これに対して大山事務長は、「財政状態は良くしなければならない。財政の危機を乗り越えるために何かを考えなければならない。」等と、経営状況が悪いことを認める発言をしていたこと、〈3〉原告は、院長就任以前、中央林間病院の経営状況の悪さについては十分に知らされておらず、院長就任後に病院の経営状況が悪いことや、病院を買収されそうになったことを知らされ、これらについては被告や医師の他、特に看護婦から教わることが多かったこと、〈4〉被告は、自ら平成四年一二月の忘年会の席上で、「このままだと病院が潰れる。」という内容のことを従業員の前で挨拶として述べたことがあったこと(なお、原告本人尋問調書中の右の部分に、「平成五年」とあるのは、平成四年の誤りであると認める。)が認められる。

そこで検討するに、中央林間病院の経営状況が極めて悪いことは、原告の前記発言に関わりなく、同病院内においてはもはや周知の事実となっていたと認められる他、被告自らも従業員に対しこれを認める発言をしていたのであるから、原告が同病院の経営の悪さについての話を同病院に勤務する看護婦にしたとしても、とりたてて責められるべきものとは解されないし、原告の発言が看護婦らの不安を必要以上に駆り立てたという事実も認められない。したがって、この点についても、原告の前記発言が就業規則上の懲戒事由に該当するとは認められない。

なお、(人証略)は、原告が、中央林間病院の経営状態が悪いことを同病院外の者についても話した旨証言するが、内容の明確さに欠け、直ちに信用することができない。又、同証人の証言中には、原告の発言により看護婦が不安に感じて大量退職したという趣旨の部分があるが、明確さに欠ける上、反対趣旨の原告本人尋問の結果に照らし、採用することができない。

(4) その他

以上の他、原告の、患者に対する不謹慎な発言及び差別的取扱い等の被告のその余の主張については、(証拠略)にその旨の記載があるが、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨に照らして直ちに信用することができず、他にこの点につき原告の懲戒事由該当性を問題にするに足りる証拠はない。

(二) 医療機器の無断購入について

(人証略)の各証言、原、被告各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告が院長に就任していた当時、中央林間病院において、〈1〉五万円以上の医療機器を購入する場合には、管理会議の決定を必要とするが、五万円未満の物品及び保険請求のできる特定医療材料の購入については、管理会議にかけずに購入することが許されていたこと、〈2〉五万円以上の医療機器についても、医療機器を業者からデモンストレーションとして借りる場合(業者からデモンストレーションとして借り受けた医療機器を、以下「デモ機」という。)には、四〇〇万円程度の高額医療機器についても、管理会議を経ずに、医師独自の判断で行うことが許されていたこと、〈3〉デモ機として借入れた医療機器は、数回使用した後であっても返品が可能であり、返品せずに購入をしようとする場合は管理会議の決定を要する取扱いとなっていたことが認められる。

又、(人証略)の各証言、原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告は別表(略)記載の物品を購入したが、これらはいずれも保険請求可能な特定医療材料であったこと及び原告は、本件各医療機器をコスモテック株式会社からいずれもデモ機として借入れたことが認められる。

本件各医療機器につき、原告がコスモテック株式会社との間で売買契約を締結したか否かにつき検討する。(証拠・人証略)によれば、コスモテック株式会社発行の本件各医療機器の見積書が存在すること及び平成五年四月にコスモテック株式会社のセールスマンが見積書を基に中央林間病院の事務長大芦正広に対し、本件各医療機器の代金の支払いを請求してきたことは認められる。しかしながら、〈1〉原告本人尋問において原告はこれを否定する趣旨の内容を述べていること、〈2〉(人証略)の証言によれば、医療機器について正式に売買契約を締結した場合には、必ず納品書が入る扱いであったことが認められるにもかかわらず、本件においては証拠上それが提出されていないこと、〈3〉(人証略)の証言によれば、本件各医療機器についての請求書を渡されていないと認められる他、実際にも、血液加湿(ママ)器及び手術用踏台については、中央林間病院において必要性を認めて購入することとしたものの、それ以外はコスモテック株式会社が返品に応じたことが認められることも考慮すると、見積書の存在及び業者から支払請求されたことのみで、売買契約の事実を推認することはできない。

そうすると、原告については、別表(略)記載の物品を購入し、本件各医療機器をデモ機として借入れたことのみが認められ、これらの行為は、中央林間病院において許されていた行為であって何ら問題はないのであるから、懲戒事由該当性の問題は生じない。

(三) 以上からすれば、原告については、被告主張にかかる懲戒事由が存したことを認めることができない。

2  手続的有効性

就業規則五一条には、職員の懲戒は、同条各号に定める原則に従い実施すること、懲戒委員会を設置し、すべて委員会にはかりその結果に基づき院長が決定すること及び懲戒委員会は、委員三名をもって構成し、委員は院長、副院長、事務長各一名とすることが定められている。

そこで、本件懲戒解雇が右規定に則ったものであるか否かを検討する。被告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、当時、副院長は存在しなかったこと及び被告は総婦長と相談したうえ、原告の解雇を決定したことが認められる。なお、被告は、被告本人尋問において、懲戒委員会を本件懲戒解雇以前に開催したこと及び懲戒委員会には被告及び総婦長の他に大山事務長も出席していたことを述べるが、被告の供述は、特に日時や事柄の前後関係の点について全般的に極めて曖昧であることから、被告が「懲戒委員会」と称する会合を本件懲戒解雇以前に開催したとする点は直ちに信用することができず、また、(人証略)が証人尋問において、なんらこの点に触れていないこと及び弁論の全趣旨によれば、右「懲戒委員会」に大山事務長が出席していたとする点も直ちに信用することができない。

思うに、本件においては、本件懲戒解雇当時、副院長が存在しなかったことや、懲戒解雇対象者が院長であるといった特殊性が存したことからすれば、就業規則五一条の規定どおりでなければ懲戒解雇をなしえないとするのは相当ではなく、代替的な方法によることも可能であると考える。しかしながら、右に認定した程度のものでは、被告が独自に原告の懲戒解雇を決定したのに何ら代わるところがなく、就業規則五一条が、懲戒処分については、中央林間病院の中枢的立場にある者の協議検討の上慎重に決定しようとした趣旨が全く没却されているのであって、就業規則上の懲戒委員会に代替する措置が執られたとは到底認められない。

したがって、本件懲戒解雇は、手続的な面においても、瑕疵が大きいものであると言わざるを得ない。

3  以上からすれば、本件懲戒解雇は無効であると認められ、右解雇無効の確認を求めた原告の請求は理由がある。

五  争点2(2)(ママ)(平成五年四月一日以降における原告の賃金債権)について

本件懲戒解雇は無効であるから、原、被告間の雇用関係は継続しており、原告は平成五年四月一日以降においても、賃金請求権を失わない。

そこで右金額を検討する。(証拠略)及び弁論の全趣旨によれば、本件懲戒解雇がなされた当時における原告の賃金は、月額二五〇万円であったこと及び賃金の支払いについては、毎月一五日締めの当月二五日払い(但し、当日が銀行の非営業日である場合は、直前の営業日)との合意が原、被告間に存していたことが認められる。そうすると、原告は被告に対し、平成五年四月一日から本件口頭弁論終結時である平成八年四月五日までに賃金支払日が到来した賃金債権として、八八七五万円(但し、平成五年四月一日から同月一五日までの半月分一二五万円及び同月一六日から平成八年三月一五日まで月額二五〇万円の三五か月分の合計額)の支払いを、また、平成八年四月以降、毎月二五日限り二五〇万円の支払いを求める権利を有していることが認められる。

六  以上のとおりであるから、原告の請求は理由があり、その余については判断する必要がない。なお、仮執行宣言は相当ではないと認め、付さないこととする。

(裁判官 合田智子)

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